エッセイ

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  第11話 年下のエスコート 

 ホストファミリー先に、家族同士で付き合いのある夫婦と息子が遊びに来た。その息子はデイビッドといい、14,5歳だった。
 その日の夕方、皆でカーニバルに一緒に出かけることになり、大人は大人同士で過ごし、私は子供たちのお守りをさせられるのだろうと覚悟していた。
 ところが、なぜか私はデイビッドと二人で過ごすことになった。
 ディビッドは中学生くらいにしては落ち着き、背も私よりちょっと低かったが、子供ながらとても紳士的な雰囲気があった。どこか私をエスコートしているよ うだった。
 私、こんな年下に気を遣ってもらってる? これってデート?
 ディビッドがゲームをする。真剣勝負の目で狙いを定めて見事ぬいぐるみを手に入れた。
「すごーい。おめでとう」
 私が喜ぶと、デイビッドは何も言わず、そのぬいぐるみを私に手渡した。
「えっ、私にくれるの?」
 感情をあまり出さない男の子だったが、口元を上にあげ微笑した。
 礼を言ったが、この状況に正直ぶったまげた。
 デイビッドを含め、自分のホストファミリーの子供達のお守りをするつもりでいただけに、私がこんな年下にエスコートされてデートしてるみたいになってい る。
 デイビッドもそれを楽しんでるのか、ついてこいと指図する。
 ちょっと待ってくれ。あんた中学生だろうが。
 さすがアメリカンの男の子。女性の扱い方に慣れてるというのか、そういう決まりがあってそれを知っているというのか、この感覚に脱帽だった。
 そして時々私の目を見てはにこりと微笑む。おいおい。いっちょ前に演出してくれるもんだ。
 最後まで私の側に居て優しくしてくれて、唸るほど感心してしまった。

 私には結構衝撃的な思い出となった訳だが、その日から数ヵ月後のこと、町でばったりと、デイビッドとその両親に会った。
 私は久しぶりだったので、喜んで挨拶しに行った。そしたら
「あなた誰?」
といわれてしまった。
「えっ?」
 一生懸命、ホストファミリーを通じて出会ったこととか説明しても、相手はキョトンとしていた。あのデイビッドですら。
 おいおいおいおい。あんた私のこと忘れたのか?
 女性の扱いは上手いが、記憶力は弱かった……
 やっぱり子供だった。
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