遠星のささやき

第2章

4 

 出向いたところの大通りに屋台が並んでいる。
 何か特別なお祭りでもあるのだろうか。
 また三岡くんのことを思い出す。
 ついパイナップルのチョコ掛けを探してしまった。

 屋台を見るたびに三岡君のことを思い出し、自分に浸って悲劇のヒロインを演じてる自分がなんか自虐するくらい笑える。
 鼻で一笑いしたときだった。
「リサちゃん?」
 名前を呼ばれえっ?と振り返った。
 そこにはトモが立っていた。
「あっ、トモ……」
 年上と判っていながら呼び捨てていた。
 あの時抱いた感情はこの時も見下したままだった。

「やっぱりリサちゃんだ。久しぶり。また会えて嬉しい」
 私はあんたに会っても別に嬉しくない。
 心の中でそう思っても顔だけは一応笑う。
「三岡君もいるの?」
 私がすぐに知りたいことだった。
「ううん、アイツはいない。俺だけあっちで屋台でアルバイトしてるんだ。今回はリンゴ飴。よかったら食べに来ないかい? またお店手伝ってくれても嬉しい な」
 トモは三岡君とうっちゃんがいないと積極的に私に話す。
 いかにも自分をアピールしていた。

 もしかしてこの人私のこと好き?
 ついうぬぼれるほど、トモは 私を嬉しそうな笑顔で見つめている。
「ごめん、用事があるんだ」
 三岡君がいないのなら答えは自然とそうなる。
 トモとは一緒に居たくない。

「そっか、残念」
 トモがそういうと、私は帰ろうとした。
 でもトモがまた引き止める。
「あ、待って、連絡先教えてよ。また会おう」
 あっ、その手があった。
 トモなら三岡君の連絡先を知っているはず。
「じゃあ、三岡君の連絡先とかわかる?」
「うん、わかるよ。俺と三岡は今一緒に住んでるもん」
「えっ? ほんと?」
 私の目が輝いたと思う。

 これでまた三岡君に会えるチャンスができたと思うと、喜んで自分の連絡先とトモの連絡先を交換した。
 トモはおまけということで仕 方がない。
 自分でも割り切る。
「三岡君は今何してるの?」
「今日は彼女とデートだったかな」
「えっ? 彼女?」
「ああ、あいつ彼女いるんだ。うっちゃんもね。いないのは俺だけ」
 何かを期待するように私をみたトモの目が許せない。
 それより、何よりショッキングなことを聞いて睨むことでトモに八つ当たってしまった。

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