第四章

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 私は首を横に何度も振り、近江君が考えていることを望んでないと悲壮な表情で訴えた。
 近江君は微動だにせず、私の腕を強く掴んだままだった。近江君の掴む私の腕が熱を持って痛い。
 物音しない静かな部屋。ベランダに続く吐き出し窓から覗く曇り空は垂れ込めて灰色の世界に染め上げる。
 これと同じように、音も色も消し去る虚無感と自分の心は同じものであった。
 でも今は壊れていくことに恐れを感じた。
 私は諦めるように力尽きて、近江君から目を逸らした。
 その直後、捉まれていた腕が自由になり、近江君は私を解放した。
 再び見上げた時、近江君の顔が弛緩し安堵している。
 いつもの近江君が笑ってそこにいた。
「いいか、悲しい時、辛い時、自棄になったら人間は馬鹿なことをしでかす。その感情に飲まれたら思考判断が効かなくなってどうでもいいって思っちまう。で もな、そんな感情に飲み込まれるな。悲しみは時間が経てば必ず和らいでいく。一時の感情に流されて自分を見失うな。ブンジはそんな事願ってないぞ」
 その言葉が琴線に触れ、私は恥も外聞もなく、声を上げて泣いてしまった。
「思いっきり泣けばいい。遠山が今必要なのは俺だ」
 私は近江君に抱きついた。そして必死にしがみ付いて泣きじゃくった。
「俺も辛いよ。ブンジはいい猫だった。俺にとってもな。ブンジを通じて遠山と親しくなれたもんな」
「近江君……」
 私はこの時やっと気がついた。近江君が好きだってことに。
 でもそんな気持ちを抱いても遅かった。近江君はこの夏、櫻井さんと一緒に留学してしまう。
 そして櫻井さんは近江君がずっと好き。あんな綺麗な人と慣れない異国にいたら、新密度も深まるだろう。
 櫻井さんがちょっと積極的になれば、どんな男もコロッと行ってしまいそうだし、あの草壁先輩だって一緒にしゃべってるだけで好きになってしまったと言っていたくらいだった。
 どうする事もできない悔しいばかりの思いが体から溢れてしまった。
「おいおい、そんなにしがみついたら苦しいじゃないか。まあ、首絞められるよりはいいけどな」
 今度は違う意味で私は近江君に抱きついていた。
 近江君は嫌がることなくいつまでも私のしたいままにさせてくれた。
 どれくらいしがみついていたのだろうか。
 泣き疲れた私は近江君から体を離した。
 泣いた顔を見られるのが恥かしくて、俯いていたら、どこからか近江君がティッシュペーパーの箱を持ってきて差し出した。
 「ありがとう」と一枚抜き取った。
「適当に座れ」
 コクリと頷いてから、居間のソファーに浅く腰を掛けた。
 近江君はキッチンカウンターに戻り、何やらごそごそしてから、グラスを手にして私に差し出した。
「ほら、これを飲めば気持ちがすっきりするぜ。心配するな、ノンアルコールだ」
 それはしゅわっとした炭酸の泡に包まれた赤いソーダだった。レモンの輪切りもちゃんと添えてあった。
「シャーリーテンプルっていうんだ。未成年用のカクテルさ」
 私はそれを手にして、一口飲んだ。レモンソーダに甘みが少し加わった爽やかな味だった。
「美味しい」
「だろ」
 近江君は私の隣に腰掛け、得意げに笑っていた。無邪気に笑っている近江君を見つめていると近江くんという人物をもっと知りたくなってくる。
 気持ちが落ち着いた私はもう一口ソーダを飲んでから、ゆっくりと口を開いた。
「ねぇ、近江君はどうして留年したの?」
「いきなりそれかよ。まあ、いいけどな。遠山には俺の事話した方がいいな。でもそれを聞いたら、遠山は俺を見る目が変わるぞ。それでもいいのか」
「何を聞いたところで、近江君は近江君だから、私は気にしない」
「そうか。だったら、長い話になるぜ。覚悟しな」
 私は聞きたいとばかりに真剣に近江君と向き合った。

 近江君は何から話せばいいのか迷いながら、最初の言葉を探していた。ここからは近江君の独白となる。

 まず、俺の母親の事から話した方がいいだろう。俺の母親は、さっき下で会ったからわかるだろうけど、かなり派手な風貌をしている。
 あの様子から察することができるように、俺の母は水商売というのをやっている。
 だけど俺はそれが自慢でもあるんだ。だって、俺の母はものすごくやり手でキャリアウーマンに匹敵するくらい有能だから。
 俺は母のお蔭で何も不自由などしたことがない。寧ろ金持ちのおぼっちゃまっていってもいいかもしれないくらいだ。それぐらい恵まれてるんだ。
 母はいわゆる高級クラブのママという存在で、そこは企業のトップ、政治家、芸能人と言った奴らが出入りするところだ。そういう人達と常に付き合いを持っているんだ。
 饒舌、聞き上手、人を見抜く才能も添えて、抜け目なく常に目を光らせて、物事を見ているような人だ。
 だから、お金の稼ぎ方もよく知っている。サイドビジネスに不動産もいくつか持っていて、このマンションもその一つなんだ。
 いくら世間が水商売って言ったところで、母のようなビジネスはそう簡単にできるもんじゃない。
 だけど母はトップに立つだけ、敵も多かった。そういうのに充分注意していたけど、その息子が足を引っ張ってしまったんだ。
 それが俺って訳だけど、俺は母親が力を持ってるとわかっていたから、少し高飛車になっていた。俺も同じくらいの権力を持ってると勝手に思い込んでいたんだ。それが虎の威を借る狐ってもんだ。
 それで調子に乗って、粋がってたんだがそれが一番ひどかったのが去年の話ってことだ。
 高校合格に安心して、派手に髪を染めて、自分のバックに権力を持つものが居ることを自慢していた。そういうのに反応する女もいてな、俺は女に不自由しなかった。
 調子こいて、他校の女子まで手を出して、それがヤバイ奴の彼女だったんだ。
 だけど、俺の方がレベルが上だと思ってたから、俺は受けてたったが、実際、そいつらは係わったらいけない奴らだったんだ。
 俺も結構、喧嘩には強い方だと思ってたけどさ、そいつらはバックに警察の世話になるやつがいて、正真正銘の悪だった。
 そいつらに目を付けられて、俺も引くに引けずに虚勢をはってたけど、ある日ボコられて、入院沙汰だ。警察も係わるくらいの事件になっちまって、当然学校は対応に困惑した。
 普段の俺の生活態度も悪かったし、被害者とは言え、挑発したのが原因と位置づけられて、厄介な生徒だと見なされた。
 学校の名誉にも傷がつくし、俺の母親の水商売という部分だけを見て、世間の体裁から、そういう生徒だから問題を起こしたって思われがちだった。
 酷い怪我だったから、一ヶ月以上学校に通えなくなり、欠席日数もやばかった。学校側はこのまま自主退学を望んでるのがヒシヒシと伝わってくるし、人生初めての敗北を味わって、俺はどん底だったんだ。
 母も俺が馬鹿なことをしたもんで、俺についての変な噂をその辺りのクラブの界隈で流された。
 俺は生まれた時から父親は側にいなかったんだ。母子家庭ってやつだけど、その父親が誰だかわからないって言う怪しげな存在だ。
 それで、俺が巻き込まれた事件を利用して、放蕩息子やら、母は誰々と不倫したやら、権力者の妾やら、地位を揺るがそうと貶めようとする噂が飛び交った。
 それも神経が磨り減るには充分な理由だったけど、瀕死の俺の大怪我を心配しすぎて過労で倒れてしまった。
 ああいう世界はイメージが大事だから、ちょっとの噂で経営にも響いてくる。だけど、母は負けなかったし、とにかく自分には自信があって、その息子も立ち直るという確信も強く持っていた。
 でも俺はあの時、体も自由に動かず、打ちのめされて全てが嫌になっていた。
 だけど、草壁や櫻井、ついでに出渕もだが、また学校に早く戻って来いと俺を励ましてくれた。
 最初は心閉ざしてたけど、怪我が治って動けるようになると少し気が楽になってきた。
 そんな時、ある人たちが俺の病室を訪ねて来たんだ。今まで全く会った事もない人だった。
 やせ細った長身の男性が妻と思われる人と俺よりも随分年上そうな娘に支えられて、俺の病室に入ってきた。
 俺も面食らったけど、その三人も戸惑った表情で俺をじっと見ていた。
「晴人(はるひと)君……」
 やせ細った男性が俺の名前を呼びながら、目に薄っすらと涙を溜めていた。 
「はい、何か?」
 その人は俺の側に寄って俺の手を突然握ると「ありがとう」と礼を言った。だけど俺には思い当たることは何一つなかった。
 後ろで妻と娘も貰い泣きしてるから、こっちも困惑して、何も言えなくなった。俺を充分見つめた後、満足して出て行って、結局なんの話もしなかった。
 その男性を見たのはそれが最初で最後だった。
 そして後からそれが俺の父親だと聞かされて、俺はびっくりしたんだ。
 その人には妻子がいたし、見るからに不倫しそうな人でもなかった。
 あんな真面目そうな男性が母の相手で俺の父親?
 全然実感がわかなかったけど、母が心底惚れた人だと俺に言うから、余計にこんがらがった。
 実際母は、ずっと俺の父親の事は黙っているつもりだったけど、その父親の余命が数ヶ月という事を知って、俺と会うことを許可したらしい。
 その人が病に侵されて死にかけていたこともショックだった。
 便宜上、父と表現するけど、その父と母は一度も愛し合ったことがなくて、俺は授かったんだ。
 どういうことかって?
 普通はそう思うよな。これって、キリストの誕生と同じだもんな。
 これも、一般的には考えられない話なんだけど、早い話が父の精子だけを母が手に入れて、人工授精したってことだった。
 それを聞いた時、人口受精? はっ? だったけど
 母は大切な思い出のように俺に話したんだ。
 まだ母が高校生だったころ、結構派手な風貌で、粋がってるような男としょっちゅうたむろしてたらしく、いわゆるバカ女だったらしい。これは自分で言ってたんだぜ。
 でも、母はそういうノリが好きなだけで、誰とでもヤルような女じゃなかった。
 えっ、表現が露骨って? 
 とにかく、誤解を招いても仕方がないってところはあったから、男は下心持って近づいたりしていたらしい。
 そんなとき、無理にホテルに連れて行かれそうになったんだ。そこに大学生の父が偶然通りかかって、助けたらしい。あまり強そうな人じゃなかったから、何発か殴られてたらしいけど、決して逃げなかった。
 一生懸命母を助けようと必死だった。くそ真面目で愚直な男だったって、母は笑いながら言ってた。でもその姿がとても立派ですごくかっこよく見えたらしい。
 ボコボコに殴られても諦めないで助けてくれたんだとか。最後は持久戦で相手が疲れたことで勝ったらしい。
 鼻血を流しながらも笑って、母に気をつけなさいっておっさんぽく説教じみて、最後に金を渡そうとしたんだ。
 母が頭に疑問符乗せていると、援助交際は二度としないで欲しいから、お金に困ってるならこれを使って欲しいって、三万円渡したんだ。勝手に誤解してたらしい。
 どこか不器用な人だと思うと、母性本能がキュンと反応して恋に落ちたんだ。お金は断っても、強く差し出すから最終的に受け取ってしまったらしい。
 母は名前と電話番号を聞いたけど、お礼はいいからということでそのまま去って行った。
 そこで母は尾行したんだけど、なぜか父は泣いてたそうだ。
 あまりにも腑に落ちなくて、声を掛けて、近くの公園でベンチに座りながら話を聞いたら、どうやら実家で飼ってた猫が死んだらしく、それが悲しかったんだって。
 気まぐれで気高い真っ白な猫だったらしく、それを聞いて、母は自分の鞄につけていたキーホルダーに気がついた。
 父は母のキーホルダーの白い猫が、実家の猫に見え、何かのサインと思って、ここでこの子を助けないと行けないってそう感じたらしい。
 なんとも不思議な縁だと思って、母は将来この人と結婚したいってピピピって反応した。
 だけど父の事を知ったら、有名な頭のいい大学の生徒で、自分とは釣り合わないって思った。でも母は諦めずにそれから勉強するんだけど、元々頭がいいって訳じゃないから、勉強しても知れていた。
 その間に父は大学を卒業して就職した。
 母は追いつきたいと何かスキルを身につけてのし上がろうと必死になってたんだけど、父はお見合いで結婚してしまって、夢叶わずで終わってしまった。
 母がその父の結婚相手を見て思ったのが、自分には敵わないおしとやかさと控えめさを持ち合わせ、父が選びそうな女性像そのものだったらしい。
 母はどうしても父の事が忘れられなかった。唯一その時自分ができたことは、真面目になっていい仕事につくことが、あの時助けてもらった恩返しだと思い、大学で経済学を学び、ひたすら頑張った。
 だけど卒業しても就職が中々できず、やっと入ったところもセクハラや雰囲気の悪いところだった。一生懸命頑張ってもこんなところにしか就職できないと悲観的になって、手っ取り早く稼げる仕事に転職した。それが水商売だった。
 だけど母は割りと器量良く、経済の事を学んだだけ、企業のトップ達とは話が合った。そこから母は二度目の目覚めが来て、ここでトップになろうと頑張ったんだ。
 そしてさらに色んな事を勉強し、たまたま知っていた事をアドバイスしたらそれが役に立って、自分の客が次々出世して行った。そこで母に会えば出世するといういい噂が流れて、どんどん人脈も広がり、母はのし上がって行ったんだ。
 なんか話がいろいろと飛び出て、聞くのが辛くないか? えっ、面白いからもっと聞きたいって? そうかい、それならいいけど、ここはどうしても端折れないところで、この後が俺の誕生にも重要な話なんだ。
 母は実力を買われ、店を任され、最後は独立して自分の店を持つまでになったんだけど、その途中で、母の噂を聞いてやってきたのが、父だった。
 父は年は取ったけど、初めて会った時のままで、真面目な人だった。
 だから、実際こんなところに来るような人じゃないのは分かってたから、きっと仕事上の悩みがあって、母のアドバイスで改善する噂を聞いてやってきたに違いないと思った。
 案の定、父はリストラ対象候補に持ち上がってたらしく、すでに会社で酷い扱いを受けていた。
 だが、どうしても仕事を失うわけには行かず、娘も私立の中学に通ったところでお金が入用だった。藁をも掴む思いでやってきたら、見覚えがあるからすごくびっくりして、そして立派になってと感激して涙を流して喜んだそうだった。
 やはりいつでも純粋な人だと母の方が邂逅に喜び、この時のために自分は頑張ってきたと悟ったんだ。
 そこで母は、過去に助けて貰った恩返しをしたいと申し出て、人脈を通じてコネを作り父の仕事の世話を難なくやってのけた。
 父は母に感謝し、お礼がしたいと言ったとき、母は閃いた。それが父との子を儲けることだった。
 しかし、あまりにも露骨なお願いはやっぱり言い出しにくくて、嘘をついたんだ。
 自分の知り合いのクリニックで高学歴を持つ男性の精子ドナーを探していると。普通なら、おかしな話だと思うところだけど、父は母の頼みとあって、承諾し た。それくらい父は自分が助けられたと思って感謝してたんだ。父はとにかくまっすぐで疑うことをしないくそ真面目な人だったらしい。
 母はそれを利用して、愛する父との子供を手に入れることができたんだ。
 約束ではドナーは匿名、受ける方の情報も一切洩らさないということで、もし子供ができたとしても、会わない会わせないが鉄則と念を押した。
 だから母も父には俺の事は一切言うつもりはなかった。
 だけど、父は余命を宣告されてから、自分の本当の妻と娘に全てを話してしまった。
 またその妻も娘も大真面目だから、今の生活があるのも母のお蔭だと感謝し、父がしてしまった事をあっさりと許した。
 そして、最後に父はあの時、自分の精子で子供ができたのか確かめたくて、母に連絡を取った。
 母は随分悩んでたそうだけど、俺が大怪我をしたのを見てると、隠していたことが罰だと思って、考えが変わりそれであの病室に父と本妻と娘が現われたという事なんだ。
 真実を知って、怪我が治った後、色々と思うところがあって、俺はもう一度父に会いたくて訪ねたら、すでに父は他界していた後だった。
 家族だけの密葬を本人が希望していたので、葬式に呼ばなかったことを謝っていたけど、精子だけ提供してできた息子には自分は相応しくない父親だと思っていたに違いない。
 俺みたいな存在を快く受け入れた本妻と娘は俺を家に上げ、仏壇にお線香を上げさせてくれた。
 その時、その家の娘、俺の半分血の繋がった姉になるわけだが、お腹が膨らんでたんだ。俺と一回り離れてるから結婚しててもおかしくなかった。
 姉は俺が若くして叔父になることを謝っていたけど、一人っ子だと思っていた自分に弟が居たことを喜んでもくれていた。
 俺も同じく姉ができて嬉しいって言ったんだ。
 俺は複雑な環境で誕生したけど、全然恥じる事もなかった。
 本妻は正直悩んだかもしれないけど、俺が気にせず堂々としている姿にポロッと言ったんだ。
「若い頃の正晴さんに似ている」
 そしてにっこりと俺に微笑んで、奥から若き日の父の写真を見せてくれた。
 自分でもなんとなく似たところがあるって思ったよ。
 父はとても頭がよかったらしい。だけどそれを活かすのが下手だったとも聞いた。
 俺の母は、頭は悪かったかもしれないけど、いざ頑張ったことを活かすのは上手かった。
 それを照らし合わせた時、俺は二人のいいところを受け継いだかもしれないって、思うようになった。
 そこで一からやり直してみたくなって、俺は出席日数がギリギリだったため留年することを選んだんだ。
 これが俺の話って訳だ。
 
 長い話だった。手に持っていたグラスのソーダの氷が殆ど溶けていた。それを一気に飲んだらとても水っぽかったけど、でも喉にすっと流れていくのが気持ちよかった。
 近江君は照れくさそうな顔をして、自分が上手く話せたか気になっている。
「とてもいい話だった」
「自慢できる話でもないんだけど、中々いいネタにはなりそうだろ」
 私は全てを話してくれた近江君がその時、もっと好きになっていた。
「今は面白半分に笑って話せるけどさ、当時はそれなりに悩んで色々と苦しかった。母もそして父とその家族も、きっとそれぞれの辛いことがあったと思う。そ う思ったら、すーって楽になったんだ。遠山もさ、早く悩みが解決するといいな。そしてブンジの悲しみが早く癒える事願ってる」
「ありがと」
「それじゃ、ここからはブンジの弔いだ」
「えっ?」
 近江君は部屋の奥に行ってしまった。再び戻ってきた時、手に何かを二つ抱えていた。
 その一つを私に差し出す。
 私は戸惑いながら、それを受け取った。
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