第三章


 家に帰れば少しは落ち着いて、自分の行動を省みる。
 何とかしたい気持ちはあるけど、あの時の自分がとった行動が、正しいのか間違っているのか全く分からない。
 時間が経てば経つほど、焦りだけがでてくる。
 電話をすればいいのか悩み、何度も電話のところへいこうとするけど、結局自分からは怖くて掛けられなかった。
 夜になって、もしかしたらマシューから電話があるかもしれないと、ずっと耳を澄まして部屋で待ってたけど、やっぱり連絡はなかった。
 小さな疵があっと言う間に広がって、修復不可能なダメージに感じて行く。
 これで本当に終わってしまったのだろうか。
 あっけない幕引きに、胸がとても痛んで辛い。
 あんなにドキドキして、夢のように過ごした日々が嘘のように、弾けて飛んでしまった。
 まさに恋のバブルだった。
 自分の取った行動が原因だから、なぜあの時受け入れなかったのだろうと、悔やんでも、それは自分が出した答えだったから、どうしようもない。
 こんなに好きになっていても、どうしても先に進めなかった自分が一番の原因だけど、それを抜きにして、ただマシューにこれから気軽に会えないことが辛くてたまらなかった。
 一体あの出会いはなんだったのだろう。
 恋が始まるあの瞬間から、スピード感はあったけど、まさか終わりもこんなに早いなんて思わなかった。
 その晩、ずっと電話を待ってるだけで何もできずに終わってしまった。
 また朝が来たけども、気だるく起き辛い。
 恋していたあの時のウキウキが嘘のよう。
 周りが明るく普段とは違った世界で、全てがまばゆくキラキラに見えた日々。
 それが180度違ってどんよりと見えてくる。
 心だけが苦しくて、落ち着かなくて、どこかで何かの間違いだといってくれるのを待っている虚しさが、自分でも哀れだった。
 世間ではもうすぐバレンタインが近づこうとしているのに、私もそのバレンタインはマシューと過ごす予定だったのに、なくなってしまった。
 ディズニーランドに一緒に行こうといったあの約束はどうなるの?
 ほんとにほんとにあれが終わりになってしまったのだろうか、ねぇ、七面鳥さん。
 それよりも何より、最初から始まっていたことかも夢のように思えて、どこかで幻想だと思い込みたい自分がいた。
 いい夢を見せてもらった。
 いい夢?
 全然、いい夢じゃない。
 ただ、一人で舞い上がって、その時の雰囲気に酔いしれて、恋に恋して、どんどん進んで、そして最後は最悪に終わりなんて、悪夢じゃない。
 自分が益々情けなくなっていく。
 始まったあの頃よりも、終わってしまったこの瞬間が一番深く心に入り込んで苦しくて溺れそう。
 授業が終わったとき、特に一番虚しくなる。
 マシューの所へは気軽に行けず、充分に話し合えないまま自然消滅へと突き進んで行く。
 もう一度話し合って、理解すれば今ならまだ復元できるんじゃないかという期待感。
 でもそうなったで、次こそは迫られたらもう断れないことも確定される。
 そこまでまだ準備はできてないだけに、この恋は私にはやっぱりハードルが高すぎた。
 キスを突っぱねてしまったあの時のマシューの怖い顔。
 あそこまで変わってしまう態度が私には信じられなかった。
 許されると思った私が甘かったってことでしょうか。
 はっきり態度で示したら、結局は私の方が振られた。
 マシューが思っている恋と私が思っている恋には、かなりの隔たりがあったってことだった。
 またここでも色々な理由を並べてしまうが、頭の中であれやこれやと考えてそれなりに答えを出しても、心にはマシューを思っている気持ちだけが浮かび上がっていた。
 一度、両思いだっただけに、崩れてしまうほどこんなに苦しいものはなかった。
 情熱の恋と悲しみの失恋を同時に味わってしまいましたよ、七面鳥さん。
 安易にウィッシュボーンであんなこと願ったのがいけなかったのでしょうか。
 でも、いつどこで何が起こるかわからないといいつつも、結果を見れば、そこへ進んでしまう選択を少しずつしていたということ。
 恥ずかしすぎて、逃げて、時には嘘をついていた。
 無理をして、好きだからという気持ちに応え様としたことも結局は身の程知らずだった。
 それらが重なってあの結果へと導いた。
 本当にもうやり直せないのだろうか。
 授業が終わった後、私はマシューが授業をとっているという教室に足を向けていた。
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