第9話 衝撃のコメント
目が合えば見知らぬ人でも「ハーイ」と挨拶。ここでは当たり前。
相手がフレンドリーな場合は話し掛けられる。
突然話しかけられて、それが聞き取れずわからなかった場合、笑ってその場をしのぐこともあるが、雰囲気のよさそうな人だと、話が弾んで楽しい会話になる
こともある。
だが嫌な人もいる。
私が散歩で近所を歩いているとき、フレンドリーを通り過ごして、デリカシーのないおっさんが私を見るなり
「コリアンか?」
と質問した。
首を横に振る、話したくもない。するとおっさんは諦めずに
「チャイニーズ?」
と聞く。
ここでも首を横に振るだけ。
次はジャパニーズって言われるんだろうと思っていた。だがおっさんは
「インドネシアン?」
外しすぎだろうが!
首を横に振る。もうすでに私はおっさんに背中を向けていた。
おっさんは
「ああー全て外してしまった」
と私の後ろで嘆いていた。その前にどこから来たのか聞けばいいのにと思った。
結局は何がしたかったのだろう。
ずっと前になるのだが、高級住宅街を散歩していたときのこと。
周りは全て大きな豪邸で、いいなと羨望の眼差しを向けながら歩いていた。
そこで猫に遭遇。
寄ってきてくれて、頭を撫ぜた。
すると近くに居たおばあちゃんが私に話しかけた。
「以前はもっとかわいい猫がこのあたりに居たんだよ」
「そうですか」
さりげなく相槌を打った。
おばあさんは話し続ける。
「私も大好きな猫が居たんだけど、あそこの家に、ベトナム人が引っ越してきてからすっかり見かけなくなった。食べられたに違いない」
「えっ?」
私は何もいえず「バーイ」とその場を去った。
なんちゅうこというおばあちゃんや。
未だに忘れられない。