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「おーいリサ! ここだ」
「リサちゃん、お久!」
三岡君とうっちゃんが車の窓から身を乗り出している。
運転席にはトモもいた。
トモはうっちゃんの肩越しに首を伸ばすようにして私を見て、何も言わず微笑んでいるだけだった。
久しぶりに見た三岡君は数ヶ月のうちに一段と男らしくなっていた。
というより、完全にかっこいいものとして私の脳内で完璧な姿なんだと思い込んでそう見えたのかもしれない。
感極まって目が潤む。
でもこんなことで泣いてることがばれたら恥ずかしくて一生懸命泣かないように耐えていた。
「ほら、そんなところに突っ立ってないで、車に乗れよ」
後ろの座席に座っていた三岡君がドアを開けて言った。
私は三岡君をチラリと見ると、恥ずかしさがこみ上げてきて遠慮がちに隣に座った。
前の助手席に座っていたうっちゃんが身を乗り出すように後ろを振り返り、明るく盛り上げようと声をかけてくる。
トモは運転席で後ろをチラッと見ただけで静かに笑っていた。
三岡君は私の隣でひまわりの花のような笑顔を見せてくれた。
とにかく歓迎されているのがひしひしと伝わる。
まるであの時のお祭りの屋台の中にいるようだった。
この雰囲気が心地よくて私は来てよかったってこの時は単純に思った。
何かしゃべらないとと急に焦って声を出した。
「また会えて嬉しい。まさか皆で来てくれるなんて」
「あっ、それって三岡だけに来てほしかったってことか」
うっちゃんがつっこんだ。
「えっ、そうじゃないけど……」
でもほんとは私も三岡君と二人だけで会うのだと思っていた。
だけどみんなで会った方が気分はちょっと楽だった。
みんながいた方が三岡君に集中しなくて気が分散される。
「トモが勝手にうっちゃんにも連絡して、結局は三人になっちまった。俺としては二人だけの方がよかったんだけど、まあ仕方がない」
三岡君の言葉がまた胸に響いてドキリとさせる。
その言葉通りにとっちゃいけないと思っても、やっぱり好きだから期待してしまう。
私はもうこの時点であっけなく苦しくなった。
だって三岡君には彼女がいるんだもん……
「それじゃ、トモ、適当に車出して、どっか行けや」
三岡君が言うと、トモは黙って車を走らせた。
そう言えば三岡君とうっちゃんとは話したけど、トモとはまだ社交辞令の挨拶もしていない。
今回の再会はトモのお陰だというのに、私はまだ何も言えないでいた。
二人で会ったときは喋りかけてきたのに、三岡君とうっちゃんの前では本当に何も話さない。
トモは一体何を考えているんだろうと、私はトモの運転する姿を彼の肩越しに見ていた。
車を運転するトモは最初に抱いた印象と比べるとそんなに悪くなかった。
トモは細いけど、腕に筋肉がついてぱっとみると頼もしい手をしていたように見えた。
元々大人しくあまり目立たない人だけど、この時は運転に集中していて、更に徹底的に脇役になっているようだった。
その間、三岡君もうっちゃんも色々と話してくる。
私は時々三岡君の顔を見ていたが、どうしても熱い視線を送ってしまっていた。
それを誤魔化すように、ついうっちゃんとふざけた会話をして無理に盛り上がってしまう。
うっちゃんは美男子だけど、とても気さくで人懐こい。
意識してないだけに付き合いやすかった。
あのお祭りの日、たった数時間しか一緒に過ごさなかったのに、しかもその後何ヶ月も会ってなかったのに、どうしてこの三人は私と仲良くしてくれるんだろ
う。
私は突然それが不思議に思えた。