序章
2
私は誰よりも真理の事を知っている。
そしてその姉妹であるマリアの事も。
二人は強い絆で結ばれ、どちらもお互いを気遣っている。
あまり表で出歩けないマリアの代わりに、真理は必死で助けようとする仲のいい姉妹。
しかし、真理の姉思いの気持ちは強くても、真理自身の性格は気弱なのが玉に瑕。
二人はお互いを補いながら、そして強くなろうとするような姉妹。
私はそれを何も言わず、ずっと見てきた。
今回も黙って見せて貰うつもりだ。
やっと動きが出てきた。
それまではただもどかしく、少しいらいらとしていたけど、この先は楽しめるかもしれない。
そんなことを言えるのも、私だけが一番理解ある傍観者だから。
マリアにもよく言われる。
「真理の事しっかり見てて」
「ええ、わかってるわ」
マリアがずっと殻に閉じこもって、自由に外に出歩きたくないからこそ、都合のいい私だけが隠れて真理を見ていられる。
鈍感な真理は、私がそんなことをしているって知らないのが少し笑える。
でも誤解しないでほしい。
私は真理が大好き。
そしてマリアの事も。
だから幸せを願ってやまないくらい。
そしてハイド。
彼がかかわるとややこしくなってくるけども、でも私は私のできることをしっかりしようと思う。
だから私がこの恋について語ろう。
ねじれていても、そこには強い愛があるから、それは意味を成す。
その愛のために時には残忍に、そして美しく。
犠牲があればこそ、一際強い光に包まれて、そして涙が頬を伝わる。
それが当たり前のように、君を愛するが故、仕方のない事。
その一瞬の愛のためなら、全ては許され、過ぎてしまえば、次第に時が忘れさせてくれる。
だから涙を流して償い、そしてそのあともまた次の涙がそこを同じように流れる。
一つ消え、また一つ消えても、塗り替えられるだけかもしれないし、それは見繕っている幸せなのかもしれない。
でも私は知っている。
その本当の意味を。
愛は美しく、尊いものなら、犠牲があってもいい。
何度も何度も繰り返せるのも、そこにイレイザーがあってこそ、なせる業。
汚れたっていいのでは、それはとにかく消せるのだから。
私一人がそれを知っている。
それも一つの密かな私の優越感。
誰が誰に恋して、結ばれても結ばれなかっても、私はそれをじっと見ている──