第六章


 予想もつかないマイキーのきびきびした船の動きは、すぐさまロックオンできず、確実に注意をそらされていた。
 フォーカスから外れたその間に、追われていた船は振り切ることだけに集中できるようになっていた。
 全ての条件が揃ったとき、マイキーは勝負のタイミングを見極め、海賊船の後に回った。
「クレート、今だ」
 ジッロの合図で、ハッチが開き、クレートの小型船が外に飛び出した。
 その様子がモニターに映し出された時、キャムは心臓が止まる思いだった。
 マイキーは再び、方向転換し海賊船の前に姿を現し派手に動き回った。
 その間に、クレートは海賊船の後部に引っかかる形でへばりついていた。
 小型船は荷物を持ち運びするため、手の役割をする装置がついている。
 持っていた粘着性の爆弾をそれで海賊船にいくつかへばりつけた。
「思ったよりもかなり頑丈そうな作りかもしれん。果たして大穴を開けることができるのか」
 多少のダメージを与えることにはなるだろうが、これだけでは足りないと思った。
 ふと船の下の方を見れば、一部分だけ違う色になっている。
 そこだけ素材を変えて修理したようだった。
 パッチワーク並に、ちぐはぐしているその様は、応急処置のようにみえた。
 あそこにダメージを与えれば、きっと効果覿面かもしれない。
 だが、そこは小型船を移動させにくく、手作業でしか爆弾を仕掛けられそうもなかった。
 一か八かやってみようと、小型船を海賊船に引っ掛け固定する。
 そしてクレートはシートベルトを外して、席を立つと、無重力状態で体が浮き上がった。
 集中するために、そして心配はかけたくないと、ヘルメットの通信ボタンをオフにした。
 爆弾を腰につけ、外へと出れば、とてつもない速度に体の自由が利きにくい。
 なんとか出っ張りを手にかけ、蜘蛛のようにはって底の部分へと近寄った。
 目当ての場所に爆弾を仕掛け、少しほっとする。
 そしてすぐさま小型船に戻ろうとした。

「マイキー、あの船からメッセージが届いてます」
 すぐさまクローバーは艦内につなげ誰もが聞ける状態にした。
「そちらの応戦に感謝します。先ほどより、距離が開きました。しかし、こちらがダメージを受けている以上、このままではまた追いつかれてしまいます。そこで、今手元にある爆弾を全て放り投げようと思います。どうか皆さん安全な場所へ避難して下さい」
 それを聞いてジッロとマイキーは慌てた。
 ほんの少しの動揺が、マイキーの操縦桿に力が入って、よけていた攻撃がそのときかすってしまった。
 艦内が一瞬にして混乱し、揺れが生じる。
「マイキー、大丈夫か」
「すまない。とにかく、爆弾を放り投げるのを中止させる連絡を入れてくれ。クレートが危なくなってくる」
 ジッロはすぐさまクローバーに振り返るが、クローバーの手の動きが慌しく動いている様子に不安を感じた。
「大変です。相手との通信が今の衝撃で切れてしまいました」
「何だって!」
 誰もが悲痛の叫びを上げていた。
 マイキーはすぐさま体制を整え、体で爆弾の投下を中止させようとしたが、それはもう手遅れだった。
 先ほど、かすったことで船は危機をさけるために方向を無意識に変えていた。
 それを相手は避難と受け取ったことで、その船からは爆弾がすでに発射準備され、むき出しになっている。
 ジッロは慌てて、クレートに連絡を取るも、応答がないことに顔を青ざめた。
「おい、クレート一体どうしたんだ。なぜ応答しない」
 外に出て爆弾を仕掛けていたクレートはまだ船に戻っていない。
 その事を知らされてないだけに、何かトラブルが起こったと思い込んでしまった。
 キャムは張り裂けそうに叫んだ。
「クレート!」
 そのとき爆弾は解き放たれて宙を彷徨っていたところだった。
 マイキーは巻き込まれないように、距離を取って離れることしかできなかった。
 そのときクレートは小型船に手をかけ乗り込む直前にいた。
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