第五話 子猫があの子であの子と僕が


 「みゃーお」などと猫の物まねで挨拶してみたり。
 えっ、全然可愛くないですって。
 どうも失礼致しました。
 こんにちは、ヨッシーです。
 私は目がなんとなく猫っぽいところがあるので、猫らしく見えるかななんて思ってたんですけど。
 猫の鳴き方も、所変われば、色々ですが、一般には「にゃあ」などと書き表して、でもアメリカあたりでは「みゃお」とNとMの発音の差がありますね。
 それと、猫を呼ぶときって、舌を上あごで弾けさすようにして「チチチチ」とか音を出して呼びますが、英語だと「キティキティキティ」と言って呼ぶんですよね。
 なんで猫の話をしてるかというと、今回猫に纏わるお話だからです。
 そして今私は、あまりこの話に乗り気じゃない。
 と、申しますのも、前回タイムトラベルしてちょっと疲れてまして、それがもう、なんていうのか、それは後で説明します。
 とりあえずは事の発端からご説明します。
 今回登場されるのは、向田才一君、16歳の少年。
 神社の裏でノラ猫の世話をしていらっしゃって、偶然私がその辺を彷徨っていましたら、そのとき妄想がちらりとみえたんです。
 思春期の男の子ですが、物静かな方で、学校でも全然目立たないごく普通のシャイな高校一年生です。
 こういう年頃って、女の子に興味を持って彼女が欲しいって思うときありますよね。
 まさにそういう願望を持っておられました。
 才一君は見かけは真面目で、ちょっと陰キャラ入ってるかもしれませんが、自分の感情をストレートに表現するのが苦手で、いつも胸に潜めているようなタイプです。
 友達もそんなに多い方でもなく、どっちかっていうと人付き合いが苦手そうな感じです。
 勉強も普通レベルと申しておきましょう。
 これからやる気が出て飛躍されることもあるでしょうし、無難になんでも人並みにそこそこはこなせそうな方です。
 目立たない分、容姿もやっぱり普通で、悪くはないと思いますが、一目ぼれされるタイプでもない。
 要するにあか抜けしてないんですね、これが。
 しかし、ちょっと自信持つだけでそこそこいけそうな感じはしました。
 人間なんでも自信がつけば、それなりに顔つきが変わってくるもんです。
 そこが上手くまだ自分で作っていけない、まだやり方を知らない、初心な男の子なんだと思います。
 そんな才一君なんですが、夏休み中に近所の神社で真っ白い子猫を見つけたんです。
 飼ってあげたかったんですけど、なんせ家族に猫アレルギーの方がいらっしゃるみたいでどうしても飼えないそうです。
 かといって放っておくこともできずに、まだ成猫になりきってない子猫だったから心配で気になっては毎日餌を持ってきては世話をしていました。
 白い子猫は神社の社や床下を寝床にして生活し、餌も水も才一君が最低限の世話をするので、なんとか育っていました。
 才一君にとったら、この子猫の飼い主を見つけたかったんですが、なかなか知り合いも少なくて、うまく見つけられないようでした。
 そんな時に、子猫を抱っこしながら、才一君は妄想するんですよ。
 この子猫がかわいい女の子にならないかなって。
 こういう年頃は何かとそういうこと妄想してムフフってことになりますよね。
 真っ白い子猫は少し灰色がかった青い目をしてて、見ても可愛いとうっとり、毛も体も柔らかく触っても気持ちいいと何度も撫で撫でしたくなってしまう。
 そしてそんな安らぎをくれるような可愛い彼女が欲しいと、猫をみながら思うわけです。
 できないこともないんですけど、とりあえず声を掛けてみました。
 この後の話は、助手の手記を読んで下さい。
 えっ、いつも助手に書かせてるけど、その助手はいつもどこでヨッシーを見ているのかですって?
 いつも私の側にいるんですよ。
 でもその姿は一般に見えるとは限らないってことですね。
 または何かの物体に魂が宿ってたりとか、それはご想像にお任せします。
 それでは、才一君の物語行ってみましょう。
 これもまた、アレなんですけど、もう私、なんだかちょっぴりメランコリーかも。
 とにかく、また後ほどに。
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