ふたりは謎ときめいて始まりました。

第三章


「ああ!」
 これはミミの悲鳴だった。織香を心配しているわけでなく、ロクが織香に触れていることにショックを受けていた。
「大丈夫ですか」
 突然のアクシデントにロクも慌てている。
「すみません。足がしびれて」
 織香は顔を赤らめ恥ずかしがる。ロクから離れるとよたつきながら壁や窓のサッシを持ってふらふらしていた。
「戸締りをしたらすぐに表に出ますので、ちょっと待ってて下さい」
 吐き出し窓を閉め、鍵を掛けカーテンを引いた。
 ロクは突っ立ったまま、その作業をじっと見ていた。
「ちょっと、ロク!」
 怒った口調のミミの声でロクははっとする。
「なんだよ」
「なんだじゃないでしょ。何、でれっとしてんのよ」
「別にしてないよ。大丈夫かなって、心配になったんだ」
「心配するなら、最初から協力を頼まなければいいじゃないの」
「ああ、そっちの心配か」
「ちょっと、そっちって、何を心配してるのよ」
「だから、足が痺れてるみたいだから、大丈夫かなと」
「足の痺れくらいすぐ治るわよ、もう!」
「何をそんなに怒ってんだよ」
「別に怒ってないわよ、ふん!」
「怒ってるじゃないか」
 ふたりが言い合いをしている間に、織香が玄関から現れた。
「お待たせしました」
 ミミはぶすっと黙り込んだ。
 織香がロクに近づきこの計画について話し出す。ミミは異物が紛れ込んだ不快を感じ、ロクが遠くにいってしまうのではと不安を抱いていた。
 落ち着かない気持ちを悟られないように必死に気持ちを抑えていた。
 ロクと肩を並べる織香。その後ろを泣きたくなる気持ちでミミは歩く。
「おい、ミミ、早く来い」
 後ろを振り向いたロクにせかされ、ミミは小走りになった。
「ロクの馬鹿。人の気も知らないで」
 ミミは小さな声で悪態をついていた。
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