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 放課後、リュウゴと会っているところに愛美里と出くわしてしまったのだ。いや、違う。愛美里は私をつけていた。
 リュウゴと久しぶりに会う約束をした私は、嬉しくて少し浮かれていた。心ここにあらずでリュウゴのことばかり考えていた。
「なんだかデートの約束でもしてるみたいだね」
 愛美里に鋭く指摘されたけど私はその時だけポーカーフェイスを気取って否定する。でもそれが却ってバレバレだった。
 以前からリュウゴに会いたいといっていた愛美里はチャンスだと思ったのだろう。それで偶然を装ってリュウゴと私の前に現れた。
 案の定リュウゴを見た愛美里の表情がいつもと違っていた。つんとすましていたはずの冷たさがなくなっている。はにかんで媚を売るような上目使い。自分の方が美しいと見せ付けるように飛び切りの笑顔をリュウゴに向けた。
「初めまして。麻弥ちゃんからお噂はいつも聞いています」
 私のことを馴れ馴れしく呼んであつかましく割り込んでくる。リュウゴの前でそんな風に呼んでほしくない。
「えっと、君は誰?」
「麻弥ちゃん、私のこと何も言ってないんですか? 親友なのに」
 リュウゴに取り入ろうと必死になる愛美里。どこまで都合がいいのだろう。でも私は強く否定できない。なんだかかわいそうに思えてしまったからだ。それにこんな風に言い寄る女の子たちは何も愛美里が初めてじゃない。慣れっこにもなった。
 私が何も言わないのをいい事に愛美里は勝手に自己紹介して自分をアピールしている。でれっとした愛美里を見るのは初めてだ。愛美里もリュウゴの魅力に簡単にやられてしまった。
 リュウゴは私を気にしながら、愛美里に気を遣う。どこまでも優しいリュウゴ。どんなときでも彼は紳士だった。もしかして愛美里が気に入った? 麻弥よりも愛美里がいいの?
 訊いてみたい気もしたが、もし愛美里がいいって言われたらどうしようとも思う。
 その日は愛美里のごり押しで、三人一緒に遊ぶことになってしまった。愛美里はリュウゴの気を引こうと必死だ。
 リュウゴ、ねぇ、なんとか言ってよ。
 それともこの三角関係を楽しんでいるの?
 はっきりといえないまま時間だけが過ぎていった。
 私も愛美里も今はまだ学生だから暗くなる前に帰らなくてはならない。早く大人になって堂々とリュウゴと付き合いたい。リュウゴは本当に私をその時まで待っていてくれるのだろうか。
 それを愛美里が邪魔をしようとしている。自分が美しいとわかっているから、自信に溢れリュウゴを私から奪えると思っている。こういう愛美里みたいなタイプは自分が痛い目に遭わなければ懲りないだろう。いつまでも邪魔をされるなんていやだ。
 私が悶々としているのとは対照的に愛美里は余裕綽々だった。
 リュウゴと別れて愛美里とふたりだけになったとき、愛美里はわざとらしく「あっ」と突然声を出した。
「ちょっと寄るところがあったんだ。また学校でね」
 さっさと私から離れていく。どこへ行ったのか私にはわかっている。リュウゴの家だ。愛美里は頭の回転が速い。先を読み取り、さっさと意のままに行動す る。根掘り葉掘りリュウゴから情報を聞き出し、家の場所をすでに突き止めている。家が正確にわからなくても、あれだけ人の目を引く風貌だから近所の人に聞 けば知っている人もいて、家を見つけるのに時間はかからないだろう。
 私も追いかけた方がよかっただろうか。でもここは我慢することにした。私はリュウゴを信じている。リュウゴの好みの女性は私だ。リュウゴはきっと私の内 面を見てくれるに違いない。外見なんかただの入れ物だ。だから私は約束した通りにしっかりとした大人になろうと思う。もっともっと自分を磨かねば。
 私だってまんざら悪くないよね。
 街のショーウインドウに映った自分の姿を私は暫く眺めていた。
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