第七章
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兄弟の再会を手伝ったことで、クレート達はカラクから手厚い待遇を受け、ついでに配送の仕事を頼まれた。
今度は歴とした正規の品物で、カラクもキャムに安心しろと念をおしたくらいだった。
アマトは兄の説得と、クレートの海賊に向いてない烙印を押され、海賊業を諦めることにした。
ジッロとマイキーはアマトの海賊業があっさりと諦められて、ずっこけるような思いでやり取りを見ていたが、その背景にはクレートに命を助けられ、キャムとクローバーへの罪の意識を感じたことも強かった。
「まあいいんじゃないの」とマイキーが言えば、「そうだよな」とジッロが後で軽く肯定してやった。
その後の話し合いで兄の工場を手助けしながら、兄弟で仕事を切り盛りして行くことに落ち着いた。
海賊の部下も従業員として雇ってくれると決まったため、誰もが文句はなかった。
「怪我の功名で上手くおさまりましたね」
クローバーの言葉にクレートは曖昧に「ああ」と返事をするも、実際全てが丸く収まったわけではないと感じていた。
それも、アマトが口にした言葉が妙に引っかかったからだった。
「クレート、あんたには一生頭が上がらない。もし何かあれば、俺は喜んであんたに力を貸す。こんな間抜けな俺だから迷惑かもしれんがな。だけど、俺が思う
にあの時ネオアースの船の襲撃は、嵌められたと思うんだ。そうじゃなければ、あの時のネオアースの船を俺が襲えるわけがないんだ。俺に情報を提供した奴が
いて、ネオアースの船を襲えば宝がたんまり入り、かなりの名声が上がるとそそのかされた。場所と時間と詳しい情報があったから、あの船を襲えることができ
た。そんな上手い話なら他の海賊だって欲しいだろうし、なんで俺のところに来たんだってことになるだろ」
知ってる事をできるだけ話そうとしていた。
「その情報提供者とは?」
「直接顔を見たわけじゃないからわからない。すまん、肝心なことがわからなくて。しかしもう一度声を聞けば思い出すかもしれない」
その時の申し訳なさそうにするアマトの表情は、もう海賊の顔をしていなかった。
悪びれようとして、わざと悪どい顔を作っていたのだろう。
指令台の席につき、クレートは色々と振り返っていた。
そのとき鳥の囀りが聞こえてきた。
キャムがレーダーパネルの前で、仕事の息抜きの傍らとして鳥笛を弄っている。
カラクに返したものの、やっぱりキャムに持っていて欲しいと強く望まれ、それを再び受け入れた。
鳥笛に込められたカラクの願いは、鳥と話をすることで、鳥になったように羽を持って自由に羽ばたいて欲しいという気持ちが込められていた。
カラクはそれをキャムに託したつもりだった。
いつか皆、鳥のように自由に空を飛べますように。
キャムもそんな願いを込めて鳥になりきろうとつまみを懸命に弄っていた。
「なんかさ、色々起こるけど、結局はうまく切り抜けてるよな」
マイキーがシミジミとして言った。
「きっとアレじゃないの。熱さも喉元過ぎればなんとやらで結局はどんなことでもそうなるんじゃないのか。終わったからもういいじゃないか。あまり蒸し返すなよ。忘れた方がいいってこともあるしさ。俺たちはそのときその時を考えればいい」
「どうした、ジッロ、なんか怖がってるみたいじゃない」
「なんか色々と一度に起こりすぎると、やっぱり溺れそうで対処できないんだよ」
ちらりとキャムの方を何気に見ていた。
「まあな、ここ最近急激に変化があったからな」
マイキーもキャムを一瞥した。
キャムは鳥笛の練習で二人の言葉には上の空だった。
ジッロとマイキーにとって、すでに心の中にキャムが入り込んで一杯一杯の気持ちになっていた。
本当は女とは知らされてないだけに、キャムが男だと思い込んでいる。
そのため、まさか自分が男に惚れるとは、キャムを好きだと言う気持ちを持ってもどうしても抵抗してしまう。
なんて苦しい恋なんだと、二人は一緒になってため息を吐いていた。
その二人の様子をクレートは黙って見ていた。
クレートが二人の気持ちに気がついてないはずがない。
どうしたものかと、腕を組んで考え込んでいた。
クレートもキャムを一瞥し、この先の事を案じてしまった。