第二章 

 12
 ゴールデンウィーク中の前半のカレンダー通りの休みが終わり、平日となって学校に行く。
 今、我が家はミッシェルの滞在のことで気をもめている。
 電話が通じない間は、ミッシェルも大人しく普通を装っているが、気まずさは隠し切れないでいる。
 その問題は母に任し、行く場所があるのなら私は好きにすればいいと思っていた。
 でも、昼休み担任の玉手に職員室に呼ばれ、そこにミッシェルのクラスの担任もいて、私の家庭の問題を訊いてくる。
 包み隠さずありのままを言えば、側で聞いていた玉手先生が露骨にため息をついた。
「距離をおきたいといわれてもだな、最低限の面倒を見るべきだっただろう」
「もちろん、普通に接してました」
「異国の地で見知らぬ家族と暮らすんだから、もっと気を遣うべきだったな。オグレは」
「木暮です!」
 いつになったら名前を覚えるんだ。
「とにかく、無意識に意地悪してたんじゃないのか」
「してません。先生にそんな風に言われる筋合いはありません」
「お前、そういうところだけは気がきついな」
 私は玉手が嫌いだ。
 当てられた問題が解けないと、私だけ露骨に嫌味を言って馬鹿にする。
 その裏には私が満点近く取って入学してきたのを疑ってるからだ。
 まるでカンニングでもしたと思ってるようだ。
 まあ、それに関しては答えを予め知っていたから辛い。
 玉手が私を訝しげに見ているとき、近くのデスクで電話を掛けていた隣のクラスの担任が顔を青ざめて受話器を置いた。
「玉手先生、ちょっといいですか。小渕司の母親から電話がありまして、大変なことになりました」
 小渕司と聞いて、私が反応すると玉手はもういいと私を邪険に追い払う。
 ミッシェルの担任にも中断を詫び、隣のクラスの担任のデスクへと言った。
 そこでこそこそと話している時に、玉手の顔つきも強張った。
 それを見ると私は二人の傍に近寄っていた。
「小渕君がどうしたんですか?」
「お前には関係ない。教室に戻れ!」
 声を荒げて怒りをぶちまける。
 学校にとっても都合の悪いことに違いない。
 何か悪い予感がする。
 その悪い予感は的中した。

 その翌日、小渕司が意識不明の重体で病院に入院していると噂が耳に入ってきた。
 それだけでも恐ろしくて倒れそうだったのに、その原因が自分の部屋で首を吊ったと聞いて私の目の前が真っ白になっていった。
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